可愛くないから、キミがいい【完】
彼からの好意は、天使を形成する糧になる。
本当にイケメンに出会えなかったら一年後くらいにやっぱり私から告白してあげようかな、なんて、ついさっき一生付き合わないって思ってたくせに、早々と心変わりする。
唯人君に足りないところなんてないはずだけど、もう今じゃムカつくちぃ君のような元カレやかつての数々の元カレのように追いかけたいとか攻略したいって思えるような何かが足りない。
その何かは説明できないけれど、私にとっては結構重要だ。
「高校生と大学生じゃ、ちょっと身分が違う気がするから、みゆは、唯人君がみゆのせいって思ってくれてるだけで、もう満足だよ?」
「ほら、みゆはそうやってすぐはぐらかす。でも、いいよ。可愛いから、許してあげる」
偉そうに。
勝手に私の可愛さに落ちたのは自分のくせに。
だけど、年上だから偉そうでも許してあげる。
唯人君が私の好きな困ったような笑顔をつくって自分の分のショートケーキの苺をくれる。
それを、ぱくりと頬張って、
笑窪をつくっておいた。
それで、私は、満たされる。
男の子は、みんなこうあって欲しい。
それから、私たちはお互いの近況をうわべを擦るように話し合った後、カフェを出た。
すっかり日が暮れていて、空を見上げたら、その隙にまた、するり、と手をつながれる。
「みゆ、門限十時だよね?」
「そうですよ?」
ああ、このくだり、昨日の伊達メガネザルと同じだ。だけど、唯人君の下心はあんまり気持ち悪くない。
それは、昨日の猿よりも、十分に信頼している相手だからだと思う。