可愛くないから、キミがいい【完】
「俺の家くる?」
「唯人君が、来てほしいの?」
「うん。俺がね、みゆに来てほしいの」
「へへ。じゃあ、行きたい」
県外から来てる大学生だから、
一人暮らしの部屋だ。
唯人君は潔癖なところがあると思う。
会わない期間は長かったけれど、きれいに片付いた部屋は健在だった。
部屋に入って、ふかふかのソファに座る。
どうせすることなんて一つしかないけれど、彼は、部屋に入った瞬間に襲ってくるような男の人ではない。余裕があるような振る舞いも、悪くないと思っていた。
「映画見る?」
「えー、みゆ映画とかあんまり分かんないかも」
うそをついている。本当は映画が大好きだ。
だけど、わざわざこんなところで見なくてもいい。天使を意識しながら誰かと映画の感想を交換することだけは、あんまり好きではなかった。
することだけやって、さくっと帰りたいのが生々しい本音だったりする。
唯人君が私の隣に座る。
体の半分が触れ合って、そのままゆっくりと顔をのぞきこんできた。
「ソファか、ベッドかどっちがいい?」
「みゆに決めさせちゃうの?意地悪さんだ」
「お姫様の意見を尊重しないとでしょ」
今のはちょっとくさいセリフ。
でも、不快感はない。
なぜなら、唯人君がイケメンだからだ。
ちゅ、と一度、触れるだけのキスをされる。
それから、至近距離で、目じりを下げてきた。