可愛くないから、キミがいい【完】
「みゆ、可愛い。どっちがいいの、」
「……ベッド、がいい、です」
大袈裟に恥ずかしそうにする。
そのほうがムードがでる。
おおせのままに、と王子様みたいに微笑んで唯人君が私の膝裏に腕を通す。そのまま、お姫様抱っこでベッドに連れていかれた。
「いっぱい、可愛がってあげる」
組み敷かれたと思ったら、深いキスが降ってきた。なれた手つきで、丁寧に制服を脱がされる。
唯人君の指先が優しく、私に触れる。
「みゆ」
「っ、……っ、」
「いちばん、可愛い」
露になった肌に、キスを降らせながら、何度も「可愛い」とかすれた声で言う唯人君。
シャツの中に手がもぐりこんでくる。
「ん、」
「声、可愛いからいっぱい聞かせて?」
「かわ、いい?」
「うん、いちばん可愛いよ」
部屋の温度があがる。
唯人くんの「可愛い」で満たされる。
酸素よりも、その言葉と気持ちが、私は欲しい。
唯人君が、前髪をかきあげる。
着ていた服を脱いで、また覆いかぶさってきた。
荒っぽさはない。
優しいし、彼の行為は私本位だ。
どうして彼女にもなってあげないのに優しくしてくれるのか分からない。
なんて、ね。分かっている。
唯人くんは、可愛い可愛い、私が好きなのだ。