可愛くないから、キミがいい【完】
1.猫かぶりトラップ
ドーナツを食べ損ねた次の日、教室に入ってすぐに友達のマユとミーナから告白の詳細について聞かれた。
もうすでに忘れかけていたし、金輪際、あの男の子とも関わることはないと思う。
「振ったよ。あんまりタイプじゃなかったんだもん」
「えー!でも、たまにはイケメンじゃなくてもいいじゃん」
「やだよ。それより、みゆドーナツが食べたかった!待っててほしかったなあ」
たまにはイケメンじゃなくてもいいって、なんだそれ。
失恋して次の恋の相手がイケメンじゃないなんてありえない。マユとミーナにはお似合いかもしれないけど私は無理だ。
心の中では悪態をつきながらも、ゆるふわ笑顔をつくってあげる。
女友達にも多少の猫かぶりは必要だ。
自分のことを名前で呼んで、憎まれないかわいこぶりっこも怠らない。妬まれないための努力は、もちろんしている。
私はいわゆる愛されキャラだ。可愛いから何しても許されるって思ってる。実際のところ、だいたい許されてしまうのだ。
マユとミーナには割と心を許しているけれど、本性は、ほとんど見せていない。