可愛くないから、キミがいい【完】
東高の学祭。新しい彼氏候補を見つけるにはもってこいのイベントだ。
磨けばダイヤモンドになるかもしれない原石みたいな男の子もたくさんいるし、ああいうところで可愛いって思っていそうな視線を隠すことなく向けられることは気分がいい。
去年も友達と行って、何人かの男の子と連絡先を交換したし、ナンパもされたしで、最高の気分で家に帰ったことを覚えている。
ただ、今年はひとつ、かなり気がかりなことがあった。
〈トシ君が来なよって言ってくれたから、私は行くよ。マユとなほちんもいくって〉
行きたいのはやまやまだけど。
――――和泉しゅうにだけは、絶対に会いたくない。
唯一私の天使じゃない部分を知っている男だ。ありえない。地球から違う惑星にいってほしい。というか、やっぱり、溝から抜け出せなくて、そこで息絶えていてほしい。
忘れるために一晩中試行錯誤を重ねたというのに、ふとした時に、ばーか、って言ったムカつく声も、言われた言葉も、あざ笑うかのような笑い方も思い出してしまう。
〈もう~!みゆは考え中!〉
ミーナには、ぷんぷんってクマがふくれっ面したスタンプも送っておく。
思い出しついでに、もうこの際、さっき、むなしくなったことも、全部全部、和泉しゅうのせいだということにしておいた。