可愛くないから、キミがいい【完】
じゃーな、と、軽やかに手を振られたけれど、無視をする。
それから、少し先にあった、たこ焼きを売っている教室へ向かおうと和泉しゅうの元から少し離れたとき、「しゅう?」と、可愛い女の子の声がして、思わず足の動きをとめた。
三人組の女の子たちが、和泉しゅうを囲む。
どうやら顔なじみらしかった。
明らかに、目がハートになってる女の子たちに、和泉しゅうは若干、煩わしそうな表情で受け答えをしていた。
「えー、久しぶり。中学卒業したぶりじゃん。相変わらず、超かっこいいね」
どうやら、同じ中学校だったみたいだ。
一人の女の子の手が、彼の腕に触れている。
和泉しゅうはそれをやんわりと引き剥がして、「どうも」となんとも感じの悪い返事をしていた。
ちら、と私のほうを見てきたので、敢えて、わざとらしくきれいに微笑む。
「え、もしかして、しゅう、一人? 私たちと一緒にまわろうよ?」
いやいや、そんなことになったら、私が一人になってしまう。すぐに違う男の子に声をかけられるかもしれないけれど、その人がイケメンかどうかは分からないし、かけられるまで一人で学祭をまわらなければいけないなんて、想像するだけですごく嫌だ。
まずい、と思って急いで和泉しゅうの元にむかう。それから、そっと背中にまわった。
かなり不本意だけど、彼女みたいな振る舞いをする。
一人になるよりはマシなのだ。