可愛くないから、キミがいい【完】
「いや、無理。一人で回ってないし」
そこで、彼女たちの視線が私に向く。
ハートだった目が瞬時に敵意丸出しのものに切り替わったけれど、私より可愛くない女の子たちだから許してあげる。
かなり睨まれているけど、こういうときは、敵意を向け返すんじゃなくて、小動物みたいな振る舞いをするほうがいいのだ。
か弱さは、演じたもの勝ちだ。
怯えた表情をつくって、かなり不本意ではあるものの、和泉しゅうの背中に隠れたまま、「……和泉君、」とわざとらしくか細い声で、彼の名前を呼ぶ。
そうしたら、ちら、と和泉しゅうが振り返った。
目つきの悪い目が細められて、わずかに片方の口角だけがあがる。
すぐに、女の子たちのほうに向き直ったかと思ったら、身体の位置をずらして私を隣に並ばせた。
はい? と思ったのも束の間のこと。
唐突に、片方のツインテールの毛先を掴まれる。
「こいつ、お前らに全然ビビってねーからな」
「え、なに? 私たち何もしてないよ?」
睨んだくせに、嘘つきだ。
「まあ、なんでもいいけど、俺、こいつと回ってるんだわ。てことで、学祭楽しんでって」
ばいばいって、あらぬことか、私の髪の束を握った方の手を揺らしだした和泉しゅう。
目の前でくるくるに巻いた私の毛先がゆらゆらと揺れている。
セクハラにもほどがある。
いきなり、ツインテールを掴むなんて許せない。