可愛くないから、キミがいい【完】
不服そうな顔をして、女の子たちが去っていく。
姿が見えなくなった瞬間に思いっきり横腹をつねってやった。
和泉しゅうが私の髪から手を離す。
ふわり、と髪の毛が元の位置に戻った。
「いってーな、狂暴」
「女の子の髪の毛に簡単に触れちゃいけないって習わなかったわけ?」
「倒せる敵は自分で倒せってお前こそ習わなかったのかよ」
習うわけないでしょ、そんなこと。ふざけたことを言うのも、いい加減にしてほしい。
誰にも見られないように、思いっきり睨んでやる。
そうしたら、和泉しゅうは憎たらしいくらいスタイルのいい身体を若干かがめて、私と目線の高さを合わせてきた。
それから、やつは、さっきとは違ってちゃんと両方の口角をあげて、きれいに笑って。
「睨んだ顔は、結構好きかもな」
「……は、」
「ぶりっこ笑顔の何億倍もいいわ」
そんなこと和泉しゅうに言われても、全然嬉しくない。ぶりっこ笑顔なんて言ってくれちゃってさ。
……本当に、嬉しくないのだ。
「あっそうですか」
ふいって顔を背けてやる。
天使なのに、台無しだ。
背けた先で、目があった男の子には、ちゃんと天使スマイルをあげておいた。