可愛くないから、キミがいい【完】
「つーか、あとでたこ焼きついていくから、お前もクレープ、一緒に並んで」
「はあ?」
「ほかのやつに、今みたいに絡まれるのがだるい」
「……じゃあ、みゆもクレープ食べるから買ってよね」
「別にいいよ。一番安いホイップだけのやつな」
「はあ?嫌だし」
「嘘だよ。何がいいんだよ」
「……ラムレーズンのやつ」
あまりにもムカつくから、本当に好きなものを言ってみたけれど、学祭のクレープにそんな変わり種があるわけもなく、「んなもんねーだろ、苺かバナナの二択だわ、アホ」と口の悪い和泉しゅうにうざいツッコミをされて。
結局、二人とも苺のクレープを食べながら、今、歩いている。
さっきから、おそろいばっかりで最悪だ。
歩き疲れた、なんて情けない和泉しゅうの一声で、空き教室にはいる。
誰もいない空間の隅っこに、二人で座った。
無言で、クレープを食べる。
顔以外世界ランキング最下位の男は、今日も今日とて甘党らしい。
廊下は騒がしいのに、二人だけの空間はひどく静かで、なんだかぽつんと浮いているみたいだ。
どうせ可愛いって思ってくれない相手に取り繕う必要なんてまるでなく、クレープを可愛く食べようとも思わない。