可愛くないから、キミがいい【完】
初めて本性を見せた男の人とほぼ一日、ずっと一緒にいるなんて信じられないことだった。
和泉しゅうのことは、本当に嫌い。
だけど、今日のことを振り返れば、最初に会った日のイメージからは少しだけずれてしまっていて。
和泉しゅうは、私のことを馬鹿にするし、すぐに嫌なことをいうし、口が悪い男だけど、本性を知ってもなお、私を貶めようとはしてこなかった。
私の分のいちごあめもクレープも買ってくれた。
わざと嫌な態度をとっていた私と同じような態度をとることもなく、ずっと私のそばにいた。
髪の毛に触れて、睨んだ顔は好きだなんて言ってきて。目つきの悪い整った顔で時々笑ってきた。
何なのだろう。分からない。
だって、初めてのことなのだ。
嫌いなだけでいいはずなのに、ひどく戸惑っている自分がいる。
「これ、内緒だけど、トシ君がね、しゅうが付き合ってない女の子とあんなに話してるの珍しい、って言ってたよ」
ミーナの言葉に、心臓のひと部分が小さく震える。
甘くはない振動。
だけど、苦くもない。
こんなに自分のペースを乱されるのは、久しぶりのことだった。