可愛くないから、キミがいい【完】
私らしくない。
風がツインテールを揺らして、
毛先が、ふわり、と踊る。
それを、視界に入れたら、頭の中で和泉しゅうの小さく笑ったムカつく顔が浮かんで慌ててかき消した。
「……でも、みゆはタイプじゃないんだもん」
私の相手は、絶対に和泉しゅうなんかではない。
私の天使なところに惹かれてくれて、可愛いって言葉をたくさんくれて、それでいて私が追いかけたくなるような完璧なルックスの男の子。
昔から、それだけは変えられない。
和泉しゅうなんて嫌いなのだ。
私から天使じゃない部分ばかりを引き出して、棒読みの「可愛い」しかくれないような男なのだから。
こつん、とからかうみたいにあてられた膝も、髪の毛先をいたずらに絡めた指先も、お化け屋敷の不完全な暗闇で無防備に笑った顔も、目線を合わせてきれいに口角をあげた仕草も。
――――すべて、明日には忘れてしまいたいこと。