可愛くないから、キミがいい【完】
本当に最近ついていない。
貧乏神に取り憑かれているのかもしれない。
もう全てを誰かさんのせいにしてしまいたい。
――――『睨んだ顔は結構好きかもな』
頭に浮かんだ邪念を急いで振り払う。
実のところ、和泉しゅうとは、学祭から一度だけ顔を合わせる機会があった。
ミーナがトシ君のバイト先のカフェに遊びに行きたいと言って、私もそれに付き添ったときのことだ。
思いがけず、トシ君と和泉しゅうは同じバイト先だったらしく、店に入ったときに案内してくれたのが和泉しゅうだった。
一瞬天使スマイルも忘れて驚いて目をぱちぱちさせてしまったのは私だけで、和泉しゅうは至って平然としていた。
ごゆっくり、と、全然透明じゃない低い声で言った後、一度だけ、私を見てふ、と鼻で笑ってきたのだった。
その時の、苛立ちを今でも覚えている。
別に私が行きたかったわけではないし、和泉しゅうに会いたいなんて、これっぽっちも思っていなかったんですけど。
もし和泉しゅうと二人きりだったら、大きな声でそう言ってやりたかった。
トシ君が働いている姿に夢中なミーナは、私の気持ちなんて一つも察してはくれず、随分と長居させられた。
他の女の子のお客さんが、和泉しゅうを見る目がハートだったことが、なんとなく気に食わなかったように思う。