可愛くないから、キミがいい【完】
もしかして、あいつが貧乏神なのでは?
たぶん、そうだ。
和泉しゅうと関わってから、本当にろくなことが起きていない。次会ったら、一緒にお祓いに連れて行ってやる。それで、その帰りに、今度はドブに思いっきり突き落とす。
来そうにない未来への決心をかためつつ、家に帰る。
珍しく、玄関には黒の革靴が並んでいた。
パパの方が帰宅するのが早かったみたいだ。
リビングに向かうと、パパはソファで寛いで、ひとりで映画を見ていた。
「ただいまー」
「あ、みゆ。おかえり。ママ、今日出張で泊まりだから帰れないって」
「知ってる、朝、ママそれ言ってたもん。パパ、何見てるの?」
「ん? ローマの休日」
「平日の夕方に?……みゆも見る」
パパの隣に座ると、パパは「確かに、見る時間はナンセンスだったかな」なんて言って、くすくすと笑った。
世の中には色々な家庭があるだろうけど、うちはとても仲良しだ。両親は美男美女で、おまけに性格までいい。
天使条例になんとなく違反しそうで誰にも言えないけれど、たぶん、私はファザコンだ。
パパよりかっこいい男の子とかこの世界にいないと思っている。ママが一番の勝ち組だ。