可愛くないから、キミがいい【完】
「私、マユって言います」
「私は、美奈です。ミーナって呼んでほしい」
「なほです。よろしくねえ」
「えっと、広野みゆです、よろしくお願いしますっ」
人が賑わう駅前のカラオケボックス。
私たちがついた時にはもうすでに男の子たちはお店の前で待っていた。
軽く自己紹介だけすませてしまう。
緊張しているふりをして、名前を言ってからの上目遣い。
うわーまじでリアルも可愛い、って男の子の一人が呟いたから、ぺこりと頭を下げておく。
なぜか男の子は三人しかいなくて、ひとりは遅れてくるようだった。その人が来るまでみんなで店の前で待つことにする。
黒髪メガネのインテリ系と、髪の毛を派手に染めたやんちゃ系と、あとはたれ目のふんわり系。
お世辞でも大袈裟でもなく、
本当にイケメンでそろえてきていて吃驚した。
どれにしようかな、とこっそり品定めする。
三人の中だったら、インテリ君がいいかもしれない。賢い人がなんとなく好きだ。
たぶんマユはやんちゃ君で、ミーナはたれ目君。
遅れてくる人が好みだったら、インテリ君はなほちんに譲ってあげることにする。
「しゅう、遅いな」
「ともがドタキャンするからいけねーんだろ。まあ、まさかしゅうが自販機のサイダーで折れてくれるとは思わなかったけど」
「違うだろ。あいつ、最近、彼女と別れたからじゃねーの?」
男の子たちがきょろきょろと辺りを見渡している。
遅れてくるのは、しゅう君って名前なんだ。
ともっていう人が本当は来るはずだったなら、ともはイケメンなのだと思う。その埋め合わせで来る男の子なら、もしかしたらイケメンではないかもしれない。