秋に黄昏マジックアワー。褐色王子は恋愛魔法陣を行使する!

剥がれ落ちる取り繕い

『アハハハハッツツーーー。』

通話の向こうで、
聞く 懐かしい
シオンちゃんの声。

『アザミちゃんっ、全然
変ってないよねー!良かったっ』

他にしゃべれる友達とか
いないからさ、
何年ぶりかに この間会えた
シオンちゃんに、
初めてさ、連絡したよ。

早退して、逃げ帰った、わたし。

リモートだとさ、
今の見た目だし、声だけで通話。

『アザミちゃん、もともとっ
サバサバのね、男前女子だった
もんっ。足も手も早いし、相手
地雷踏んだよねっ!アハハ。』

転げて笑ってる、シオンちゃん。

「それってさ、どーゆー意味よ」

『まんまー。気に食わない、
ダンス交流の相手のね、足を
踏みぬいてたでしょ!あれ、
たまったもんじゃないよねっ。』

あれはさ、人の体をドサクサに
触るからだよ! サイテーに鉄槌!

『にしてもさっ!紹介しておいて
何だけど、イリュージョニスト・
ケイって、イケイケなんだ 。
でも、結局 アザミちゃんは 、
バレた変装の心配してるの?
それとも、ケイが嫌なの?
逆に気になるの?どうなのっ!』

シオンの勢いに、
アサミは電話を 少し耳から離す。

「わかんないよ。だってさ、、
シオンちゃんて 恋愛とかって
いうかさ、彼氏とかいる?」

恥ずかしさを感じつつ、
アサミは シオンに
問いかけた。

『いなーいっ。きっと、
この先も出来ないかなっ?
1度価値観が変わっちゃうと
難しいって 正直思うなっ。
追い込みかけられて、
夜逃げて、潜伏して
なんて1回でもしたらねー。』

サラリと
壮絶な単語を並べる 友に、
苦笑する。

その通りだよ。
お互い詳細は 言わないけど、
同志だと思う。

「わかるよ。全くさ、
シオンちゃんと、同んなじ
気持ちになっちゃってるん
だよ。わたしもさ。」

わたしの 返事にさ、
シオンちゃんは、少し沈黙よ。

『・・生きるかどうかって思い
と、存在の不確かさとかねっ?』

弱くて
みすぼらしい自分を知って、
人を信じる事、出来ない。

「うん、シオンちゃんとならさ、
安心して、共有できるけどさ」

なのにさ、恋とか出来る?
悩むのに

『でもね、いつか そんな気持ち
を拾ってくれる人も、いるかも
だよ?アザミちゃんっ。』

自分の底辺の感情を、唯一さ、
共有する友達が、いうんだよ。
それっさ、

「シオンちゃんはさ、いるんだ」

『どうかなっ。最後はーー1人
じゃないかもしれないって
最近はね、思っているよっ。
アザミちゃんは、まだ無理?』

「どうかな、、」

『やだなぁ、西山の華って
女の子達憧れの麗人だったのに。
カッコいいアザミちゃん
どこーっ!!本当鈍感だよねっ』

今は地味OLだからさ。

『アザミちゃんっ!』
「ん?」
『幸せになれーっ!!』

涙でるよ、本当にさ。

おしゃべりは
尽きないけど、
時間は過ぎちゃってさ、
朝はやってくるよ。

バンケットオフィスに
出勤すれば、まず
早退した事を、
課長とミズキ先輩に 謝る。

何か、やつれてる課長は、
わたしの体を心配してくれた。
今が一番山場だから、
無理をさせてるんじゃない
かって。

課長の方がよっぽどひどいけど。

思いたって、
向かいデスクのミズキ先輩に、
ペンを走らせて
付箋メモを、PCに貼りつけた。

ミズキ先輩は、一瞥して

「タムラさん!あなた、、
わかったわ、ヤマモリね。
あいつ、漏洩じゃないの。」

目を細めて、睨んだけど、

「でも、これ盲点だわ。後で
課長に提案します。きっと
課長も驚く、逆転技よ。」

しっかり
課長が悩んでいて、
ヤマモリさんが 打診してきた
件の内容を 耳打ちしてくれた。

やっぱり、
サロンホールと大規模賓客
交流のスケジューリング難航。

ホールとゲスト日程が
合わないのを、解消する為
出した
わたしの提案は、
あの、EARTH POOLだった。

課長とミズキ先輩が
打ち合わせした後に、
上司陣から
新たな イベント日が、
この後 バンケットスタッフに
提示された。

わたしは、
そんな事よりも重大な
問題がある。そう、
ケイに見つからないように
今日は退社する。

昨日の今日だからさ、
ここはもう逃げて帰りますよ。

アサミは、いつもの
エントランスホールから
地下のステーションを通る
帰宅ルートを変更。

裏手になるタワー管理室前の
業者出入口から
外に出る。

ベリヒルの 裏道でさ
1駅歩いていけばいいよ。

左右を確認しながら、
アサミが 裏道への
キャナルウォークを歩き始めた時、出し抜けに
よく知る声に掛けられた。

振り向くと、そこには
ヤマモリ。

「ヤマモリさん、その格好、、」

上から下まで、紛うことなき
執事服に、金色のバッチ。
ヤマモリの姿は、

「P・B、です、か。」

プライベートバトラー!!SS級!
嫌な予感。

「タムラさん。うちの主が
貴女との面会を希望されて
まして。少々
お時間宜しいでしょうか。」

恭しく、白手袋の片手を前に
出して
執事の礼をとる男に、アサミは

「ヤマモリさんを、P・Bに
なんて、どんな、雇い主ですか」

青くなって問う。

「同行頂ければ、お分かり
頂けますよ。さあ、」

ヤマモリの台詞の瞬間、
アサミは脱兎のごとく
駆け出した!

引き離す!
裏小路に入りこんで巻いてやる!

アサミが そう考えて
道に入る瞬間、

後ろから襟首を捕まれる気配!

即座に 後ろ手で、
相手の手首を掴んで、

自分の上半身を屈め
背負い投げの体制に
入った!ら、
さらに相手は
アサミの背中を軸に
体を回転させて、

アサミの前に着地した!!

「っ、B・GもSS級っ。」

身辺警護もこなす体躯に
思わず唸るしかない。

「いや、普通、逃げるかな。」

「さすが、副センター長ですね。」

ヤマモリを見据えて はく。

「まさか 投げられるとも
思わなかったんだよ。」

息1つ乱れない 、

「身を、守る為、です。」

嫌みな執事よ。

「タムラさんって一体、」

逆に走ろうとしたら、

執事服の左腕が
真横に 胸上部へ当てられ、

ブロック弊に 縫い付けられた。

「規格外、です、ね。」

アサミの息が上がる。

「いやいや、そっくりそのまま
お返しするよ。
この様子なら、なるほどね。
主が 病院送りになるわけだ。」

えっ?何んて?

「その様子だと、覚えがあると。
タムラさん。ヒルズヴィレッジ
内の医療センターに 主の、
お見舞いに来てくださるかな?」

ヤマモリさんはさ、
要件を 最後まで言ってきたよ。

「わかり、ました。」

「良かった。拘束していかな
きゃダメかと思ったよ。うん。」

人のいい執事顔してよ、
もう 遅いって。

本当にさ、
ケイ、貴方、容赦ないよ。


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