魔法通りの魔法を使わない時計屋さん
カウンター奥に座り自分もその光るサンドイッチを食べながら、リリカは訊く。
「この時計、どこで手に入れたんです?」
「え? あぁ、知り合いからね、直せないかって相談されたんだ」
「あなたのものじゃないんですね」
「うん。でも、すごくお世話になっている人でね。だから、君が直してくれたらその人も喜ぶんだけどな」
ティーカップ片手ににっこりと笑った彼に、リリカはカウンター越しに半眼で答える。
「残念ながら、ここにいても時間の無駄ですよ」
「なぜ君は魔法を使わないんだい?」
またリリカの嫌がる質問だ。ピゲはハムサンドを食べながらまた耳を伏せた。――でも。
「この店を開くときに決めたんです。時計修理に魔法は使わないって」
そうリリカが溜息交じりに話し始めピゲはちょっと驚いた。話してしまった方が諦めると思ったのだろうか。
「なぜ」
「魔法がなくても時計修理は出来ますから。私の時計職人としてのプライドです」