魔法通りの魔法を使わない時計屋さん
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最初にその異変に気付いたのは猫のピゲだった。リリカのベッドの足元で丸まって寝ていたピゲはその音に気付いて耳をピンと立てた。
――カタカタ、コトコト。
そんな音が下から聞こえてくる。
「リリカ、リリカ起きて!」
ピゲがリリカの耳元で呼ぶと、リリカはすぐに目を覚ましてくれた。超絶不機嫌そうに。
「なぁに? まだ夜中じゃない」
「下で変な音がするんだ。泥棒かもしれないよ」
ガバっと勢いよくリリカが起き上がった。耳を澄ませてみると、確かに聞こえてくる。
――カタコト、カタカタ。
「リリカ、どうしよう」
「なにビビってんのよ。私を誰だと思ってるの? お城の護衛に来ないかって話もあったくらいなんだから」
言いながらリリカはベッドから降りて、ゆっくりとドアへと向かった。
その後ろをおっかなびっくりついて行くピゲは、リリカがドアを開けたときのキィという音にちょっとだけ跳び上がってしまった。