私と貴女の壊れた時計
それはそうだが、人に教えられる余裕などなかった。
「それに、人に教えるのも勉強の一つだぞ。志田が理解できたら、神山はその範囲は完璧に理解しているということになる」
そうは言うが、人に押し付けようとしているのが見え見えだった。
私はもう一度、きちんと断ろうとした。
だが、真宙がそれを許してくれなかった。
「お願いします、神山さん!」
私の腕を掴み、泣きそうになりながら言ってきた。
初対面で馴れ馴れしいと思った。
だが、これを断れば、私が悪者になってしまうような気がした。
「……じゃあ、私のクラスで教える」
「ありがとう!」
真宙は本当に嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、切羽詰まっていた私の心は、少し癒されたようだった。
真宙と職員室を出ると、並んで廊下を歩く。
何が楽しいのか、真宙はスキップでもしそうなくらい、足取りが軽かった。
「……志田君って、文系だよね」
無言でもよかった。
むしろ教室に着くまで、一切話さないでおこうと思った。
だけど、そんな状態でいきなり勉強を教えられるかと言われると、自信はなかった。
少しでも打ち解けておいたほうがいいと判断した。
そういうわけで、私は真宙に質問をする。
「うん、文系。数学とか理科とか、ずっと苦手なんだ」
私は緊張しているのに、真宙は変わらず笑顔だった。
「私と逆だね」
私の笑顔は、ぎこちない。
自分でもわかるくらいだ。
「数学ができるなんて、神山さんは凄いなあ」
でも、真宙は感心するばかりで、それには触れなかった。
私は胸を撫で下ろす。
しかし自分では普通だと思うことを褒められると、どうすればいいのかわからない。
「それに、人に教えるのも勉強の一つだぞ。志田が理解できたら、神山はその範囲は完璧に理解しているということになる」
そうは言うが、人に押し付けようとしているのが見え見えだった。
私はもう一度、きちんと断ろうとした。
だが、真宙がそれを許してくれなかった。
「お願いします、神山さん!」
私の腕を掴み、泣きそうになりながら言ってきた。
初対面で馴れ馴れしいと思った。
だが、これを断れば、私が悪者になってしまうような気がした。
「……じゃあ、私のクラスで教える」
「ありがとう!」
真宙は本当に嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、切羽詰まっていた私の心は、少し癒されたようだった。
真宙と職員室を出ると、並んで廊下を歩く。
何が楽しいのか、真宙はスキップでもしそうなくらい、足取りが軽かった。
「……志田君って、文系だよね」
無言でもよかった。
むしろ教室に着くまで、一切話さないでおこうと思った。
だけど、そんな状態でいきなり勉強を教えられるかと言われると、自信はなかった。
少しでも打ち解けておいたほうがいいと判断した。
そういうわけで、私は真宙に質問をする。
「うん、文系。数学とか理科とか、ずっと苦手なんだ」
私は緊張しているのに、真宙は変わらず笑顔だった。
「私と逆だね」
私の笑顔は、ぎこちない。
自分でもわかるくらいだ。
「数学ができるなんて、神山さんは凄いなあ」
でも、真宙は感心するばかりで、それには触れなかった。
私は胸を撫で下ろす。
しかし自分では普通だと思うことを褒められると、どうすればいいのかわからない。