私と貴女の壊れた時計
「……本気で一つもわからないのね」


先生が教室に来たことで、説明は終わった。

そして私の感想が、それだった。


「俺たちも何度も丁寧に説明してるんだけどな。ずっとこの調子なんだ」


真宙は机に突っ伏している。

寝ているのではない。

自分の理解力のなさに落ち込み、死んでいるのだ。


「だが、さすが神山だ。わかりやすくまとめられている」


先生は私が書いた黒板を見て言った。


でも、生徒である真宙が理解できなかったのだから、わかりやすくまとめることができても意味がない。


「ごめんね、神山さん……僕、微分は捨てるよ……」


簡単に諦めたのが、気に入らなかった。

真宙は何度も先生に説明されていても、私が説明したのは今日が初めてだ。


それで理解してもらえなくて、諦めると言われ、納得がいかなかった。


「ダメ。私、志田君がちゃんと微分の問題を解けるようになるまで、何回も説明するから。諦めないで」


真宙も先生も目を丸めた。


自分でも驚いた。

誰かに教える余裕なんてないと言っていたくせに、と思った。


「神山、志田に付き合うと終わりが見えないぞ。いいのか?」
「……二週間やってみて、それでもダメだったら、私も諦めます。それに、自分の勉強にもなりそうなので」


さすがにそれ以上他人に時間を割いていたら、自分の勉強が危うくなる。


そう思って答えたら、真宙が私に抱きついてきた。


「ありがとう、神山さん!」
「ちょ、離れて!」


こうして、私は放課後、真宙に勉強を教えることになった。


そこまではよかった。


二週間、どんな工夫をして教えても、真宙は微分の問題を解くことができず、私が微分の範囲を完璧に理解しただけだった。
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