私と貴女の壊れた時計
あのころの私たちは、未熟で、素直で、可愛らしいところがあった。


今では、本音を話す機会も少ない。

だから、昨日みたいなことが起きるのだろう。


思い返しただけでも腹が立つ。


一言あれば、こんなに気にすることもなかったはずだ。


そう思うと、真宙に直接文句を言いたくなった。

まだ朝が早いから、出かけていることはないだろう。

真宙が家に帰っていればの話だが。


真宙の家の合鍵を手に、自分の部屋を出る。


隣の部屋に行くと、鍵を開けた。


玄関には、真宙がいつも履いている靴が揃えられている。


よかった。

帰っている。


片手で数える程度しか来ていない部屋に、足を踏み入れる。


昨日遅く帰ってきたのか知らないが、真宙はまだ眠っていた。


真宙が起きるのを待っていられなくて、私は真宙を揺すって起こす。


真宙は目を擦ると、私を見つけた。


「早紀ちゃん……?なに、してるの……」


私がいることに驚いているらしい。


まあ無理ないだろうが。


「真宙に言いたいことがあって」


真宙は体を起こすと、小さく欠伸をする。

ベッドを降り、カーテンを開けた。


寝ぼけているのか。

私の話を聞いていない。


「……僕も、早紀ちゃんに言っておきたいことがあるんだ。ちょっと顔を洗ってくるから、適当に座って待ってて」


真宙はキッチンに行った。


私が悪いことをしたわけではないのに、怒られているような気がした。

真宙の姿が見えなくなったことで、一気に体が軽くなったようだ。


戻ってきた真宙は、両手にお茶を注いだコップを持っている。


「ごめん、おまたせ」


それをローテーブルに置くと、腰を下ろした。
< 17 / 25 >

この作品をシェア

pagetop