キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。
「頑張ってね」


真奈は優しく微笑み私を送り出す。

その姿が〝清楚なお嬢さま〟という感じで、見た目はよく似ているのに、どうしてこれほど違うんだろうと考えてしまった。



今日は実戦方式で、部員を二チームに分けての紅白戦を行う予定。

すぐにジャージに着替えた私は、グラウンドにベースを置いていく。


「次は……」


一旦倉庫に戻って石灰を取り出し、ホームベースから一塁までのラインを引き始めた。

高校野球ではこの距離が二十七・四三一メートルと決められていて、あらかじめ杭が打たれているが、それを結ぶようにラインを引かなくてはならない。

この作業は苦手で、いつもラインがグニャリと曲がってしまい先輩たちに笑われることもよくある。


「あー、また曲がった」


何度か砂をかけて消しては引きを繰り返し、他のベース間も一応ラインは引けた……けど、やっぱりまっすぐじゃない。

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