キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。
白チームは吉岡先輩が記入している。


「俺だって――」
「ん? なんか言った?」
「なんでもない」


ボソッと中江くんがなにかつぶやいたが、周囲の雑音にかき消されてよく聞こえなかった。
なんだったのだろう。


その後、ふたり続けてアウトになり、池田先輩は二塁に残留でチェンジとなった。


「池田先輩、いい当たりでしたね」


ショートの守備につく彼にグローブを渡しながら思いきって話しかけると「サンキュ」と笑顔を見せてくれた。

それだけでテンションが上がる。


一方隣の中江くんはまだ出番がなく、私たちの様子を横目にずっと黙り込んでいた。


試合は一進一退の攻防戦。
今日の紅白戦は五回までで、五回の表で二対二の同点。


「中江、あと頼んだ」
「はい」


池田先輩に声をかけられた中江くんは、いよいよ出番。

ポジションはピッチャーだけど、まずはバッターとしての出場だ。


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