キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。

白チームのピッチャーはすでに福岡先輩から二番手の先輩に交代しているが、今日は調子がよくてなかなか打たせてくれない。

中江くんはバットを持ち、バッターボックスに入り構えた。


そしてピッチャーが投げ込んだ第一球を、力を抜いたかのようなスイングで弾き返す。

その球はライトの頭上を軽く超え、その先にあるプールに飛び込んだ。


「スゲー、ホームランじゃん」


誰かが興奮気味につぶやいたけれど、私の目は軽々とホームランを打って見せた中江くんにくぎ付けだった。


「なんだ、アイツ。バッティング練習みたいに余裕で打ちやがった」


池田先輩が感心したようにため息を漏らす。

ストレートだったとはいえ、球速もコースも悪くなかったと思う。

それなのに難なく、しかも初球を打ち返した中江くんの技術に皆が驚いていた。


ゆっくりとホームベースを踏んで戻ってきた彼に、池田先輩が口を開く。