キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。
ギリギリのコースを丁寧に突き、しかもかなりのスピードの乗ったボールを、誰もかすることすらできず、なんと九球で終わらせた。

これには両チームの先輩たちも口をあんぐり開けるしかない。
もちろん私も。


「アイツ、あんなにすごかったか?」

「いえ、びっくりです」


池田先輩に聞かれた大島くんが、目を丸くしている。


「即戦力じゃないか。秋季大会、期待できそうだ」


旭日高校は、かつて試合に出場できるギリギリの人数しかいなかった時代もあったようだけど、甲子園出場を果たして以来は部員数が膨らみ、ベンチ入り争いも激しくなっている。


学年問わずライバルになるが、中江くんの力を素直に認める池田先輩の器の大きさを感じる。

さすがに池田先輩がレギュラー落ちすることはないだろうけど、ライバルに違いないのだから。



その日の帰り。部室の掃除を終えて駅まで行くと、中江くんの後ろ姿が見えた。

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