キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。
大島くんと別れて、自販機にお金を入れるところだった。


「お疲れ」
「おぉ」


彼の返事はいつもこう。


「今日すごかったね。ホームランは打つし、ピッチングは冴えてるし」
「普通だよ」


普通なわけがない。
全員あのレベルなら、苦労せずとも甲子園の切符を手にできる。

彼はペットボトルのキャップをひねり、水をゴクンゴクンと豪快にのどに送る。


「お前も飲む?」


半分くらい一気に飲み進んだところでペットボトルを差し出されて目を見開いた。

間接キスになっちゃうでしょ?


「い、いいよ。私も買う」


慌てて財布を取り出して、スポーツ飲料を購入した。


「行くか」
「うん」


家が同じ方向の彼とは、しばしば電車も一緒になる。

ホームに走り込んできた電車に乗ると、腕を引かれてドアの横に立たされた。


「チビは真ん中行くと埋もれるから」
「小学生みたいな扱いやめてよ」


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