キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。
反論しながらその通りだなとも思う。

この路線はラッシュでなくとも人がそこそこ乗っていて、周囲を大きな人たちに囲まれると息苦しくなるからだ。


「小学生で十分だろ」


彼はもてあそぶように私の頭をグシャグシャッと乱暴に撫でた。


「ちょっ。ボサボサになるじゃない」

「髪振り乱して働いてるくせして、今さら」

「悪かったわね」

「褒めてんだけど、俺」


褒めてるの? 一生懸命働いてると認めてくれたの?

思いがけない返事に目をぱちくりしていると、彼はニヤリと笑う。


「お前、ちょろいな」
「は?」


もしかして、冗談? 
喜んだ私がバカだった?


「それにしても、中江くんにあんなすごい実力があったなんて皆知らなくて、びっくりしてたよ」


私は話を変えた。


「負けたら悔しいだろ」
「そりゃあ……」
「だったら負けないように努力するだけ」
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