キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。
入部当初はもうひとりいたのに、練習が厳しすぎて辞めてしまった。


二年生のマネージャーはふたり。

ふたりとも木陰でバットのグリップテープの巻き直しをしている。
大変な雑用は、下級生の仕事なのだ。


その先輩ふたりは野球にくわしかったわけでもなく、単に誘われたからマネージャーにおさまったらしい。


ふたりを誘ったのは、池田先輩。

先輩の半袖のユニフォームの袖からのぞく腕はたくましく、ストイックに練習に励んだ成果が現れている。

短めの髪は爽やかさ全開で、中江くんよりは背が低いがぱっちりした目には目力がある。後輩の私にも優しく微笑(ほほえ)みかけてくれる素敵な人だ。


「あーぁ、こげこげ」


顔の汚れは取れたけど、夏の炎天下での活動のため日焼けがひどい。

八月ももうすぐ終わるというのに暑さが収まる気配はなく、一応強い日焼け止めを使っているのに汗で流れてしまう。


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