キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。
「うん、頼んだ」


自分で行ける……と思ったけれど、体に力が入らない。


「無理すんな。目、閉じてろ」


中江くんは私を軽々抱き上げて校舎のほうに足を進める。


「ごめん。中江くん、ピッチング練習しなくちゃ」

「そんなもん、いつでも巻き返してやる。お前は他人の気遣いばかりだから、もっと自分を大切にしろ」

「ごめん」

「謝んなくていいから。お前は休憩だ」


コクンとうなずいた私は、それから素直に目を閉じていた。



涼しい保健室のベッドで横になっていたら、練習が終わる頃には体調も戻っていた。

帰りになんと池田先輩がわざわざ顔を出してくれた。


「柳瀬、大丈夫か? 顔色、戻ってるね」


彼はキャプテンとして様子を見に来てくれただけだとわかっているのに、相変わらずの優しい声に鼓動が速まるのを止められない。


「ご心配をおかけしました。本当にすみません」


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