キミがくれた奇跡を、 ずっとずっと忘れない。
「あっ、いけない」


ボーッとしている場合じゃない。
次は飲み物を用意しなくちゃ。


一旦部室に向かう途中で、カキーンと金属バットが奏(かな)でる高い音の方向に視線を送った。

するとそこには、一心不乱にバッドを振る池田先輩の姿があって思わずニタつく。


かっこいい。

夏の予選を敗退して三年生が引退したあとキャプテンに指名された池田先輩は誰もが認める旭日高校の主砲で、あっという間に部をまとめ上げた。

率先して厳しい練習に食らいつくような真面目な人なので、皆黙ってついていくのだ。


一方、バッティングピッチャーのうちのひとりを務めているのは、中江くんだ。

長身の彼が振り下ろす球は速く重いらしい。

もちろん今は全力で投げてはいないけど、他の選手より球速があるように見える。


私はふたりの必死の練習を見ながら、再び部室に足を進めた。



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