先生がいてくれるなら②【完】
ここは先生の住むマンションの一室。
先生の素顔は今のところ誰も知らないけど、一緒にいる所を誰かに見られるのは好ましくない。
そうなると、会うのはどうしても、車で遠出するか、先生の家と言うことになり……。
私は隣に座る先生に、にっこりと微笑みかけた。
「だって、先生とこうやって一緒にいられるのは、彼女たちのおかげだから」
先生が、その綺麗なブルーグレーの瞳で、私を見つめる。
キラキラと光る先生の瞳に、私が映し出されている。
こんな風に先生と見つめ合うことが出来るのも、彼女たちのおかげなんだ。
「だから、もういいんです」
先生に私の想いを伝えられただけでも十分なのに、先生とこうやって一緒にいられるなんて、これはもう本当に奇跡に近い事なんだ。
「立花……」
先生が私を抱き寄せる。
蹴られた背中の痣が痛むのを気にして、そっと、優しく。
そんな先生の優しさが嬉しくて、私は恥ずかしさと嬉しさで染まる頬を先生の胸に押し当てて、いまこの幸せをゆっくりと噛みしめた──。