先生がいてくれるなら②【完】
「沖縄、楽しかったですか?」
そう聞かれ、思わず “お前がいなかったから楽しくなかった” と口にしてしまいそうになって……。
「何が一番印象的でしたか?」
そう問われ。
「──やっぱり夕焼け、かな」
お前に見せたかった。
いや、お前と一緒に、見たかったよ……。
俺の撮影した沖縄の夕焼けが、立花の携帯にも共有される。
沖縄での時間を共有することは出来なかったけど──。
いつか、お前を沖縄に連れて行ってやりたい。
この願いが叶うかどうかは、いまの俺にはまだ分からないけれど。
だけど、そんな風に物思いにふけってばかりもいられなかった。
俺は、立花にどうしても確認しておかなければならない事がある。
あの時、何があったのか──。
どうやら言いたくない内容のようだが、彼女を助けた教師としてだけではなく、俺自身が、何があったのかをどうしても知りたかった。
立花は「面会時間が過ぎてますけど」と言ってはぐらかそうとするが、事前に光貴に連絡して許可は取ってある。
そう告げると、立花はようやく観念して、あの日なにがあったのかをゆっくりと語り始めた。