先生がいてくれるなら②【完】
呼び出された事、言い合いになった事、暴行を受けた事、倉庫に連れて行かれて閉じ込められた事。
そして、あの真っ暗な倉庫の中で、どうやって自分を保ちながら、俺に助けを求めるために頑張ったのか、──。
胸がギュッと、痛いぐらいに締め付けられる。
立花が一体何をしたって言うんだ?
一瞬でも “死を覚悟した” なんて、半分笑いながら言うのが、俺には痛々しすぎてもう見ていられない。
抱き締めて、俺が守ってやるからって、そう言って、力一杯抱き締めてやりたくなる。
だけどそんな事は、教師である俺には許されない。
俺は、少し彼女に身体を寄せて、……優しく、出来るだけ優しく、頭を撫でた。
今の自分には、これしか、してやれない。
これだけしか、する事が出来ない。
それがあまりにも悲しくて、苦しくて、心が痛くて。
「うん、お前はよく頑張ったよ」
立花の頑張りに、そう言って頷きながら頭を撫でてやるしか出来ない……。
だけど──無事でいてくれて、ありがとう。
頑張ってくれて、ありがとう。