先生がいてくれるなら②【完】
立花の頬から手を離し、彼女の両手をふんわりと包み込む。
「俺なんかで、いいのか?」
「先生じゃなきゃ、ダメです」
「俺、ジキルとハイドだよ……?」
俺が苦笑いしながらそう問うと、立花はふわっと微笑んで、その表情だけでまた俺の心を鷲掴みにする。
「そんな先生も、大好きだから」
あぁ……、もう、本当に、完全に俺の負け。
俺はゆっくりと一度瞬いて──。
「俺は教師だから、特定の生徒に特別な想いを持つ事は出来ない」
俺がそう言うと、立花は今にも泣きそうな顔で、俺を呼ぶ。
「立花、聞いて。まだ続きがあるから」
大丈夫だよ、これは、お前を悲しませる言葉じゃない、そう伝えるために、しっかりと見つめたまま立花の手をギュッと握った。