先生がいてくれるなら②【完】

立花の頬から手を離し、彼女の両手をふんわりと包み込む。


「俺なんかで、いいのか?」


「先生じゃなきゃ、ダメです」


「俺、ジキルとハイドだよ……?」


俺が苦笑いしながらそう問うと、立花はふわっと微笑んで、その表情だけでまた俺の心を鷲掴みにする。


「そんな先生も、大好きだから」


あぁ……、もう、本当に、完全に俺の負け。



俺はゆっくりと一度瞬いて──。



「俺は教師だから、特定の生徒に特別な想いを持つ事は出来ない」



俺がそう言うと、立花は今にも泣きそうな顔で、俺を呼ぶ。


「立花、聞いて。まだ続きがあるから」



大丈夫だよ、これは、お前を悲しませる言葉じゃない、そう伝えるために、しっかりと見つめたまま立花の手をギュッと握った。


< 122 / 354 >

この作品をシェア

pagetop