先生がいてくれるなら②【完】
「──で、どっちから言ったの?」
ひとしきり3人でじゃれ合った後、ユキさんが核心を突く質問を繰り出した。
「あ……えっと、私、です」
私は恥ずかしくなって、ちょっと小さな声でそう答える。
「おお、さすが明莉ちゃん。え、何て言ったの? どんなシチュエーションで??」
ユキさんの言葉を聞いた先生は、面食らったように目を見開いて、「有紀さん!」と慌て始めた。
……やっぱり珍しい光景だ。
先生が慌てるなんて。
いや、私も正直言って告白の言葉とかシチュエーションなんかは恥ずかしくて口に出来ないけど、先生だったらサラッと言っちゃいそうな気がしていたものだから、ちょっと驚いた。
そうか、私はまだまだ先生のことを何も知らないんだなぁ。
私はどう答えようかと考えていると、先生は立ち上がって私の手を掴んだ。
「……散歩に行って来る」
ユキさんの質問攻撃をかわすために、先生は手っ取り早くこの場を離れることを選んだようだ。
ユキさんは「あ、逃げた!」と言って、わざと少し悔しそうな顔をしている。
「ランチ用意して待ってるから、ゆっくり行っておいで~」
リョウさんとユキさんに見送られて、私たちは海岸へと向かった。