先生がいてくれるなら②【完】
「どうかしましたか?」
「前に来た時の事、思い出したから」
立花を抱き締めたままふわりと頭を撫でて「前に来た時も、こうやってお前を抱き締めたな、って」と言うと、立花は何も言わずに、ただ、うんと頷いた。
「まさか、もう一度お前とここに来られるとは思ってなかったから……嬉しい誤算だな」
立花が、ギュッと抱きついていた腕の力を少しだけ抜いて、俺を仰ぎ見た。
その仕草と表情に誘われるように、俺は立花の額にかかる髪を優しく横に払い、その滑らかな額に唇を押し当てる。
すると、不意打ちの額へのキスに、立花は驚いて目をパチパチさせた。
そして、みるみるうちに顔が真っ赤に染まる。
「あはは、顔、真っ赤」
俺は笑いながら立花の両頬を手で包み込んだ。
立花は「先生のバカっ」と言いながら俺の胸のあたりをポカリと叩いたが、そんな可愛い反撃じゃあ、ますますからかいたくなるだけなのに。
「おでこにキスしたぐらいで赤くなってたら、この先どーすんだよ?」
立花の顔を覗き込みながらそう言うと、「こ、この先、って……!」とあたふたと慌てふためいている。
「なに? この先、何があるか言ってみて?」
真っ赤になって慌てふためく立花は、ほんと可愛い。
「うそだよ、ごめん」
ごめんな、いじめて。
お詫びの気持ちを込めて、もう一度立花の額に唇を落とす。