先生がいてくれるなら②【完】
きっと前髪と眼鏡の奥であのブルーグレーな瞳が私を睨んでいるのだろうけど、私は笑いを堪える事が出来なかった。
「まぁ、いいじゃないですか。私も出ますよ、リレー。頑張りましょう」
「……待って。立花サン、あなた怪我してなかったっけ」
「やだなぁ先生、あんなの怪我のうちに入りませんよ!」
あはは、と笑って先生の肩をポンと叩いた。
「え、立花さん、怪我してるの? 大丈夫?」
驚いた表情で私を見たのは、市橋君。
「ありがと、大丈夫だよ。走るのにはあまり支障ないから」
あの事件からまだそれほど時間は経っていない。
まだ背中も足も紫色の痣が残っているけど、幸いもう10月に入ったので長袖ブラウスで隠せるし、足は薄手の黒いタイツを履いてしまえばほぼ肌の露出は無いから、誰にも痣を見られた事は無かった。
痛まないわけでは無いけど、これぐらいの怪我は走るのに問題は無かった。