先生がいてくれるなら②【完】
私を追う先生の後ろ姿。
風を切って走る横顔。
かなりのスピードで走りながらも、余裕のある笑みを浮かべる先生の口元──。
どうなってんの、この映像……。
「市橋君……」
「なに?」
「うちの部って、映像研だっけ……」
画像を茫然と見つめながらそう言うと、ふふっ、と市橋君が笑うのが目の端に映った。
本当によく編集出来ていた。
私がゴールする瞬間、先生の走る横顔がクロスされ、まるで私と先生だけの世界になっている。
再生が終わっても私は全くその場から動けず、何も映らなくなった画面をただじっと見つめていた。
「あのね、立花さん。ちょっと遅くなったけど、これ、僕ら5人からのお祝いって事にさせて?」
「……え? お祝いって、何の……?」
意味が分からず、少し首を傾げて市橋君に聞き返す。
すると、市橋君とみんなはにっこりと笑って声を合わせて「立花さん、お誕生日おめでとう!」と言った。
「え、あぁ、そっか、誕生日……。ありがとう」
私の誕生日は、ちょうどみんなが修学旅行の初日の、10月1日だったのだ。
「すごく嬉しい! みんな、ほんとにありがとね」
みんなの気持ちがこもった映像……心から嬉しい。