先生がいてくれるなら②【完】


そして無情にも、あっという間に会食の日がやってきたのだった……。



先生は、私としては初めて見るスーツ姿で……。



「先生……」

「なに」

「……素敵です」

「……爆弾魔」

「──は?」

「……いや、いい」


先生、普段着も十分モデルさんみたいで素敵ですけど、スーツ姿は垂涎ものです!


ちょっと写真に撮ってもいいでしょうか!?


いや、写真なんて静止画じゃあ勿体ない、もうここはいっそ、動画で!


スマホを取り出そうとする私の挙動が明らかにおかしい事に気付いた先生が、冷たい眼差しを私に向ける。


「なんかよからぬ事を考えてるだろ」

「……めっそうもございません」

「その手に持ってるものは何だ?」

「これはスマートフォンでございます、先生」


はぁ、とため息をつく先生。


「行くぞ」


え、待って下さい先生、動画を、ぜひ動画を!


スマホを私のバッグに放り込んで、私を車に押し込んだ。


仕方ない、後で……帰ってから撮影会させてもうらおう、と心の中で先生にお願いしたいポーズなんかを思い描く。


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