先生がいてくれるなら②【完】
会食がなんとか無事──かどうかは分からないけど、とにかく終わり、サロンとか呼ばれる部屋に通された私は、なぜか藤野教授と光貴先生の三人で食後のコーヒーを飲んでいた。
なぜこの三人なのかと言うと……お母様と広夢さんは久しぶりに会う孝哉先生と積もる話があるらしく、先生を別室にちょっと強引に引っ張って行ってしまったから……。
「ごめんね、立花さん」
申し訳なさそうな表情で私に謝る光貴先生に、私は首を横に振った。
全然大丈夫です、一番緊張するお食事が終わったので。
死ぬほど緊張しました、緊張で手が汗ばんで思わずナイフとフォークを落としそうになりました……。
──なんて、そんな感想は恥ずかしすぎるので心の中だけに留めておくけど。
「孝哉とは仲良くやっているかね?」
教授の唐突の問いに、私は思わず慌てふためく。
「は、はい、一応……。あの、孝哉先生との事、ご報告が遅れてしまって、申し訳ないです……」
先生の仕事が忙しくて土日に会えない時は、私は病院の小児科病棟で子供達に読み聞かせをしたりしてる。
それをどこからともなく聞きつけた光貴先生と藤野教授にお茶に誘われる事も、実は何度かあったりして……。
そんな風に何度か顔をあわせているのに、先生とお付き合いする事になったことを教授には直接報告出来ずにいたのだ。
だって、何て言って良いかわからなかったし、目の前で反対されるのも怖かったから……。