先生がいてくれるなら②【完】
それなのに。
「僕も父も、二人がちゃんとくっついてくれて安心したけど」
……こんな風に歓迎してもらえるのは、ちょっと予想外だった。
良いのかな、こんな風に思って貰っても……。
もちろん、ご家族の反対が無いって事は、私としてもとても嬉しいことではあるけど……。
そんな風に少しもやもやとした気分でいると、孝哉先生がサロンに入ってきた。
そして私の横にすごい早さでやって来て私の腕を掴んだかと思うと、「帰るぞ」と凄く怖い顔で言って出口へと引っ張って行く。
「えっ、ちょっと、先生っ」
まだ挨拶もしていないのに帰るわけにいかない私は、その場に残ろうと踏ん張るが、先生の力に到底勝てるわけもなく、ずるずると引きずられるように扉の前まで引っ張られた。
「先生っ、ちょっと待って下さい、私まだ、挨拶がっ……!」
私が必死にそう言うと、先生は扉の前で辛うじて止まってくれた。