先生がいてくれるなら②【完】

そんな私たちの傍らに、ゆったりとした優雅な歩調で光貴先生が近づいて来て。


「兄さん。立花さんの意思もちゃんと尊重してあげて」


そう言われて、先生は掴んでいた私の腕をゆっくりと放した。



私は教授の前まで歩いて行き、「今日はお招き頂き、ありがとうございました」とお礼を言って頭を下げる。


教授は私を見て少し表情を緩めて頷き、孝哉先生に聞こえないように小さな声で「また病院で」と言った。


私は再び頭を下げ、次は光貴先生の前へと歩み寄る。



光貴先生は孝哉先生に思いっきり睨まれていたけど全く意に介す様子も無く、にっこりと私に微笑みかけている。


「光貴先生、ありがとうございます」


何が、とは言わないけど、今日私に対して言ってくれたことやしてくれた事全てに対して。


いろいろ、本当にありがとうございます。


色んな意味を含んだ私の言葉を恐らくほとんど全て理解してくれているであろう光貴先生は、「どういたしまして」と綺麗すぎる笑顔で返してくれた。



痺れを切らした孝哉先生が「もう良いか?」と言って再び私の腕を掴む。


でも、さっきほど強引にではなく、やんわりと、促す程度に優しく……。



私は教授と光貴先生に向かって会釈して、「失礼します」と挨拶をしてその場を後にした。



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