先生がいてくれるなら②【完】
食事会が無事に済んだところではあるが、少しだけ話を遡らせて欲しい。
一応、体育祭に関わる話も、俺からほんの少しだけ……。
面倒なことに、俺は体育祭の『全校対抗リレー』の教員チームのアンカーに選ばれてしまった。
俺を選んだのは教頭だ。
「若いんだから、頑張って!」なんて月並みな台詞でねじ込まれた。
勝ったチームには食堂の一週間無料券が与えられるらしく、やたら盛り上がる競技だ。
去年も無理矢理走らされた。
去年は、俺が『元陸上部で走るのは速い』なんてバレたら翌年以降が面倒だと思ったので8割ぐらいの力で走ってやった。
もちろん教員チームは優勝出来なかった。
これで俺に実力が無いと思ってくれただろうと思ったのに……。
「──めんどくさい」
数研の部室で教頭の言葉を思い出し、思わずそう呟いてしまった。
それを耳ざとく聞きつけた立花が「え?」と聞き返す。
リレーに狩り出されたことを告げると、立花はなぜか嬉しそうに笑う。
「……笑い事じゃないんだけど」
眼鏡の奥で思い切り睨んだが、見えていたかどうか。
立花は必死で笑いを堪えながら「私も出ますよ、リレー。頑張りましょう」なんて言い出して……。
は……???
いま、お前、何て言った???
「……待って。立花サン、あなた怪我してなかったっけ」
「やだなぁ先生、あんなの怪我のうちに入りませんよ!」
立花は「あはは!」と笑って俺の肩をポンと叩く。