先生がいてくれるなら②【完】
待てよお前、ホントにその怪我で走る気か!?
お前、自分で鏡見たか?
背中全体、見事に痣だらけだろ!
てめ、ふざけんな!
俺がどんだけ心配してるか、分かってんのかよ!?
俺たちの会話を聞いていたらしい市橋が「え、立花さん、怪我してるの? 大丈夫?」と言って驚いた表情で立花を見る。
よし、市橋、言ってやれ、怪我してるのに走るのは無理だ、って。
しかし立花は「走るのに支障ない」などと理解不能な言葉を並べ、話を逸らすためなのか、教員チームのアンカーは誰かと問う。
アンカー、……。
「……俺」
そう呟いて長机に突っ伏すと、「──教頭先生、センスの塊。ナイス教頭……」などと巫山戯た言葉が聞こえてきたので思わず起き上がって立花の頭をペシッと軽く叩いた。
「いたっ。怪我人に対する暴力反対!」
「怪我人はリレー禁止」
「あ、先生、私に負けると思ってるんでしょう!? ふふふ!」
そう言う問題じゃないだろ!
そもそも俺様の足の速さを侮ってるな?
「くそっ……本気で走ってやる……」
思わず俺がそう口にすると、俺たちのやり取りの一部始終を見ていた市橋がボソッと呟いた。
「……痴話喧嘩、禁止……」
お、おい、市橋……
俺と立花は、思わず同時に凍り付いた──。