先生がいてくれるなら②【完】

* * * * *

体育祭の日がやってきた。


説明は全て割愛させて貰う。



ただ一点だけ述べることがあるとするならば、立花の足が思ったよりも速かった、と言うこと。


この一点に尽きる。


そして、なんと気持ちよさそうに、楽しそうに走るヤツなんだ。


これは本当に予想外だった



俺にバトンを渡す陸上部顧問が結構頑張って追い上げてくれたから、俺は間違いなく立花を抜かせると思った。


ところが、どんなに全力で走っても、立花の背中に追い付くことが出来ない。


もう少し、と言う所まで迫るが、どうしてもその背中には届かなかった。



まじか。


コイツ、なんで陸上部じゃねぇの?


俺が陸上部の顧問だったら、速攻スカウトするわ。


しかも、気持ちよさそうに走りやがって、怪我人のくせに。



「立花、お前逃げ足速すぎ」


退場のために整列している立花に、思わず俺は声をかけた。


すると、倉林が立花の手首を掴んで退場門へと引っ張りながら俺に嫌みを言う。


くそっ。


走ってる時は俺も気分が良かったんだが……最後が後味が悪すぎた。



──何はともあれ、体育祭は終わった、やれやれ……。



いや、ひとつ問題が残った。


間違いなく来年もアンカーをさせられるだろうな……。



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