先生がいてくれるなら②【完】

* * * * *

準備室に突然押し入ってきた男に、俺はいま思いっきり睨まれている……。



「……話が無いなら、出て行ってもらえるかな」


俺がそう告げると、その男──倉林悠斗は、近くの椅子をガシャンと音を立てながら引き寄せ、ドカッと座り込んだ。


……出て行く気は無いらしい。



俺がため息を吐くと、倉林はますます俺を睨みつけ、ようやく口を開く。


「……お前、教師だろ? 良いと思ってんの?」



まぁ、十中八九、その話題だとは思ったよ。


倉林への返事をちゃんとしたって話は、立花から報告を受けていたから。


さて、どう答えるかな……。


どんな返事をした所で倉林が納得するとは思えないし、俺も引き下がるつもりは無い。



なかなか答えない俺に痺れを切らしたのか、「何とか言えよ!」と鼻息を荒くしている。


……若いねぇ。


まぁ、それだけ立花に本気だって事か。



「悪いけど、手放す気は無いから」



俺はそれだけ答えると、クルリと椅子を回転させて仕事に戻る。


そんな俺の態度が倉林を更に激高させた。



「てめ、ふざけんな……教師のくせに! こんな事が知れたら、お前クビじゃねぇの!?」



倉林の言葉に、俺は無表情で小首を傾げて見せた。


「もちろんその通り。だけど……お前はこの事を誰かに言ったりはしないだろう?」

「……さぁ、どうだかな」

「言わないよ。言ったら一番悲しむのは、誰か分かってるはずだから」


そう、俺たちのことが明るみに出れば、一番心を痛めるのは立花だろう。


それを倉林が考えないわけが無い。


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