先生がいてくれるなら②【完】
俺の言葉を聞いた倉林が、悔しそうに唇を噛む。
悪いが、お前の負けだよ。
俺は立花を手放すつもりは絶対に無い。
「ところで……」
俺は、この男にひとつ聞いておかなければいけない事がある。
「いつから俺が “あの時の男” だって気付いてた?」
ショッピングモールで倉林にわざと俺たちを目撃させた。
しばらくの間は俺だと気付いていない様子だったが、いつからか授業中に俺を睨むようになったから、あぁ気付いたんだな、とは思っていた。
あの時立花と一緒にいた男が俺だと、いつ気付いた?
「さぁね。……まさか本気で手を出すとは思ってなかったから油断した。お前、ホント教師失格だな」
「何とでもどうぞ。教師失格なのは俺が一番よく分かってるよ。……他に言いたいことは?」
俺の質問に倉林は立ち上がって、座っていた椅子をガシャンと大きな音を立てて元に戻す事で返した。
そして去り際に「明莉を泣かせたらマジでぶっ飛ばすからな!」と言い残し、準備室の扉を乱暴に開閉して去って行った。
──やれやれ。
とりあえず必要最低限の了見は相手に伝えた、お互いに。