先生がいてくれるなら②【完】
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事の発端は、立花が同級生に暴行されて病院に入院した事だった。
大学病院の教授である俺の親父にちょっと便宜を図って貰ったその見返りに、親父は「家族の食事会に顔を出すように」と要求した。
それも、2回。
なぜだ、なぜ2回なんだ。
1回でも大概疲れるって言うのに……。
光貴が取り次ぎ役となって、既に1回目の食事会は終了した。
俺は会話らしい会話をした記憶は無い。
残念だったのは、このところ母が体調不良で伏せり気味だと言うことだ。
光貴によると女性特有の年齢的なもの──更年期特有の症状によるものだと言う。
──親父も付いているから心配はしていないが……。
しかし実家は相変わらずバカみたいに広いばっかりで、まったく気が休まらない。
今は親父と母、それに下の弟でまだ大学生の広夢しか住んでいない。
まぁ今更狭く出来るわけも無いからそれは仕方ないとしても、あの寒々しい雰囲気だけはどうにかして欲しい。
気が滅入る。
「次の食事会には、彼女も連れて来なさい」
親父にそう言われ、俺は思わず「……誰を連れて来いって?」と聞き返してしまった。
俺の返事は予想通りだったのだろう、顔色一つ変えること無く「もちろん、立花明莉さんだよ」などと……。
俺は思わず目眩がした。
なんで家族の食事会にあいつを連れて行かなきゃいけないんだ。
意味が分からない。
家族のごたごたに他人を巻き込むなよ。
「反論を聞き入れる余地は無い」
最後にそう返され、立花の食事会への出席は決定となった──。