先生がいてくれるなら②【完】
サロンへ立花を迎えに行くと、親父と光貴が立花と和やかな雰囲気で話をしていた。
もっとも、立花はまだ緊張しているのか少し表情がぎこちなかったが。
しかし……心配はしてなかったけど、ここまで仲良くされるとなんだか妙に疎外感を感じる……。
俺は立花の腕を掴んで「帰るぞ」と少し強い口調で出口へと引っ張った。
抵抗する立花、立花を擁護する光貴、それを無言で見つめる親父──。
一刻も早く立花を連れてこの家から出たかったが、そう言うわけにはいかないらしい。
立花が、親父と光貴それぞれと挨拶を交わす。
親父が立花に何か言葉をかけたが、それはとても小さな声で、俺の所までは聞こえなかった。
親父の立花を見る表情が驚くほど優しくて戸惑う。
光貴と交わした会話は、お礼とそれに対する返答だけだった。
やっと退出することがかなった俺は、ほっと安堵の息を吐く。
俺がもう少し心の余裕があれば良いのだが、この家に来るといつも本当に落ち着かなくて、今日も立花にまで気を回してやれるほどの余裕が無かった。
一緒にいても、いなくても、結局立花を独りにしてしまうから、出来るだけこの家には連れて来たく無いと言うのが本音だ。
ごめんな、立花。
本当に、ごめん。