先生がいてくれるなら②【完】


──そして今日は、クリスマスイブ。



ちょっと前に先生に「クリスマスぐらいは外食しよう。予約しといたから」って言われていて。


その言葉の後に、「おしゃれしておいで」と付け加えられていた。




やっぱり先生は午前中いっぱい学校で仕事をした後、お昼過ぎに私の家に迎えに来た。



「……可愛い。似合ってる。……食べて良い?」

「!!」


ちょ、ちょっと待って下さい、ここ私の家の前!


しかも路上!


更に言えば、車の中じゃなくて、ホントに路上だから!!


普通に人や車の往来があるから!


だ、だだ、誰かに──ご近所さんとかに聞かれたら、明らかにマズイですから!!



「せ、せせせ、先生っ……!」



慌てふためいてしまっている私に対して「公道で大きな声で “先生” はマズイから」なんて言っていて。


そもそも、先生がとんでもない事を言い出したのが悪いんですからね!?


た、食べる、とか……



「ま、とにかく車に乗って」


そう言って先生は助手席のドアを開けてくれた。



どうぞ、とニッコリ笑う先生。


うー、なんか負けた気がして、ちょっと悔しい。


しかもその綺麗な顔でニッコリとか。


勝てるはずがない。



私は色んな意味で赤面しながら、しぶしぶ助手席へと滑り込む。


先生は満足そうに微笑んで助手席のドアを閉め、運転席へと乗り込んで「じゃ、行こうか」と言って静かに車を発進させた。



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