先生がいてくれるなら②【完】

車から降りる前に「先生、これ、プレゼントです。良かったら使って下さい」と言って、綺麗にラッピングしてもらったプレゼントを手渡した。


「え、……ありがとう」


先生は予想外だったのか、一瞬固まってたのがちょっと可愛かった。


「……いまここで開けても良い?」

「もちろんです」


丁寧に包みを開ける先生。


先生の綺麗な指先の動きに、私は思わず見とれてしまう。



包みを解いて手袋を大事そうに手の平に乗せた先生が、嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう……早速使わせて貰おうかな」

「はい、ぜひ!」



車から降りた先生は、なぜか右手にだけ手袋をはめ、左手の手袋は右ポケットへ仕舞う。


──そして、先ほどのように、私へと左手を差し出したのだ。



私たちはだいたいいつも、左側が私、右が先生の立ち位置。


何かがあった時に、先生の利き手である右手が空いているように、って言うことらしい。



私は、自分の手袋を左手だけはめて、右手を先生の手にそっと重ね……私たちの絡み合った手は、先生のポケットへ──と言うわけなのだ。


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